雑記

このページでは螢石について少しお話したいと思います。

組成
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和名:螢石
英名:Fluorite(フローライト)
化学組成:CaF2
硬度:4
比重:3〜3.3
結晶:等軸晶系
へき開:4方向に完全
光沢:ガラス状
色:オレンジ以外全て
条痕色:白
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用途
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螢石は世界中で産出しました。現在は廃鉱などで産出する鉱山が限られてきました。当初はコレクター品ではなく、融解剤やレンズの原料として工業目的で採掘していました。現在見ることの出来る美しい結晶も、またもう見ることの出来ない結晶も砕かれ、粉末にされ使われて来ました。大変もったいない様に聞こえますが前記の材料としては優れた鉱物であったということです。
人は数が減りめったに手に入らなくなったり、高価な価値が付き始めるとそれを収集し始めます。そのために現在のようにコレクターが増えてきたのでしょう。確かに数ある鉱物の中では比較的手に入れやすく、カラーバリエーションが豊富で美しさにおいても群を抜いています。そういった意味でも蛍石は一生かかっても終わりがないと思えてきます。
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特徴
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螢石は名前の通り、蛍光性を持っています。紫外線(日光)や熱に反応して発光します。熱するとしばらくの間蛍光を続けます。しかし熱に弱く、破裂する恐れがあるため試すのはやめたほうが良いでしょう。
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色彩
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螢石には数々のカラーが存在します。一般的にはオレンジ以外は全て存在すると言われています。
本来の螢石は無色透明です。ロシア産、アメリカのニューヨーク産、スペイン産が有名です。しかし、本来の色であるはずがほとんどが有色になります。中にはアメリカのイリノイ州産のように層をなし、一つに何色も色付いている物もあります。そのような差がはっきり出る原因ははっきりとは分かっていません。
各カラーについては以下のような希土類元素が関係し、色付きます。

・・・サマリウム
・・・イットリウム
黄緑・・・イットリウムとセリウム
・・・酸素のカラーセンター
ピンク・・・イットリウムと酸素のカラーセンター
色の変化する螢石・・・イットリウムとサマリウムとセリウムが関連したカラーセンター

中でも蛍光性の非常に強いイギリス、ロジャリー産は
イットリウム・ランタン・セリウム・ネオジウム・サマリウム・ユーロピウム
ガドリニウム・ディスプロシウム・エルビウム・イッテリビウム
のように多くの希土類元素により不思議な現象が起こります。
聞いてると頭が痛くなるようなことですがそれだけ螢石が奥が深いということです。他の鉱物ではこのような色彩変化は見られません。

希土類元素について詳しい解説はこちら
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結晶形
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螢石にはいくつかの結晶形が見られます。多くは六面体(立方体)です。その他にも十二面体、八面体、球体などが存在します。面白いことにピンクの螢石は八面体しかありません。また球体はインドやミャンマーなど、東南アジアに多く見られます。十二面体は中国、アルゼンチンなどで見られます。
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世界の代表的螢石
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ここからは世界でも特徴のある標本が採れる産地ごとにお話していきたいと思います。

まず、螢石の特徴である発光が顕著な標本についてですが、代表的なのはイギリスのロジャリー産、モロッコ産、アメリカのニューメキシコ産が有名です。これらの標本は日光はもちろん、懐中電灯、カメラのフラッシュだけでも蛍光します。つまり、飾っていると常に蛍光しているということです。特にロジャリー産は顕著で普段のエメラルドグリーンが真っ青に蛍光します。見事としか言えません。カット石にしてもアレキサンドライトのように家の中と外でガラッと色が変わります。

次に、イリノイ産の螢石です。ここの産地はいくつか有名な鉱山があります。 Minerva#1,Denton,Annabel Leeなどです。しかしもう9割以上の鉱山が閉山しました。前記3鉱山からは特に美しい標本を産しました。一色ではなく、2,3色が層をなした(ゾーニング)結晶が採れました。こちらも色の変化の原因は分かりません。
この産地の螢石のほとんどが工業用に採掘しました。現在から考えるとどれだけ美しい標本が砕かれ、溶かされ、消えて行ったか。そう考えるともったいない気持ちでいっぱいになりますが、仕方のないことですよね。そのおかげで現在は値が高騰し続けています。お持ちの方は大切にして下さい。
この産地の美しさは当サイトのアメリカのページを参照して下さい。

次は、アルプスのピンク螢石です。ピンクは数あるカラーの中で最も高価です。理由は一つ、採れないからです。代表的なのはフランスのシャモニー産とスイス産です。
この螢石はアルプスの3000メートル以上の高山で採掘されます。プロのロッククライマーによって断崖絶壁から命がけで採掘されます。しかも夏の一ヶ月のみという限られた状況で運が良ければ下界へもたらされます。シャモニー産は何年ごとかに晶洞が発見され、ワインのように何年物というように言われます。しかし、晶洞が空になるともう終わりです。それとは反対にスイス産は晶洞がほとんど出ません。そのために最も高価となってしまいます。シャモニー産はどちらかというと赤色ですが、スイス産はほんとに綺麗な桜色をしています。(当サイト、スイスのページ参照)宝石にもなりますが硬度が4と低いため、実用には向きません。しかしながら澄んだ空気の神の領域ともいえる場所から採れるだけあってその美しさは言葉では言い表せません。
ピンクは他に、パキスタン、ペルー、中国、イギリスなどでも産出します。しかし質はアルプスより落ちます。でも高価なことには変わりありません。

長々とつまらない話をしてきましたが、少しでも参考になれば、また螢石に興味が出ていただければ嬉しく思います。

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